大森海苔 丹右ヱ門の記憶

~300年の歴史がある海苔漁場であった大森の過去と現在~

江戸時代の紙位牌

当家の仏壇の引き出しに、法名(戒名)が書いてある紙位牌が複数見つかってから3年と経ちません。


見つかった経緯ですが、仏間の整理の時に『何か引き継がれていない古いものがあるのでは?』と期待を込めて探ったところ、仏壇の隠し引き出しというものに気付きました。

ドキドキして引き出しを引くと、ビニール袋に古い縦長の紙が沢山入っているものが出てきました。
それこそが新しくても大正9年のもので、最古は元文4年(1739年)の紙位牌でした。

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元文4未十月九日 尺妙意信女

以前の記事にも書きましたが、江戸~明治にかけての年月日では元号の次に干支が記載されているものが殆どです。

尺は現在では釈(旧字:釋)。浄土真宗では亡くなったら皆、お釈迦様の弟子になるというところからきています。
そして妙は女性の法名によく見ます。
信女は男だと信士。これは位号といいます。

信士、信女→居士、大姉(たいし)→大居士、清大姉

の順に位が高いです。
子供だと童子(女)、孩児(女)、嬰児(女)となります。

また、お寺や社会に貢献すると院号なるものもつけられます。こちらは法名の頭につきます。

例:○○院釋△△居士

△の部分には、生前の名前(俗名)ともう一文字その人を表すような字が使われます。
三代目までの法名を例にすると、

初代丹右エ門:釋丹嶺
二代目助次郎:釋助蒙
三代目菊藏:釋菊養
この上に院号、下に位号がつけられております。

ちなみに、法名(戒名)をつける際はかなりの金額が必要で、院号をつけるとなると更に驚くくらいの金額が必要です。
浄土真宗は費用の面だと良心的であるそうですが、正直お寺、住職によると思います。



話は戻り、
確認すると過去帳に無い名前の紙位牌が多くありました。過去帳菩提寺で弔った際に名が書かれるので、旅先で亡くなった等の事情で他のお寺で供養された際は過去帳には記載されません。


新たな発見があったと喜びは束の間、見て分かるように亡くなった日・法名しか記載されていないため名前も続柄も享年も何一つ分かりません。これではしっかりした系図も追記出来ません。
何故に生きていた時の名前を尊重せずに、亡くなった後につける訳のわからない名前を尊重するのか分かりません。
先祖供養の風習は残っているのに、誰の何番目の子供で誰であり何歳まで生きたのかを子孫に全く分かるようにしないのも不思議な話です。過去帳の備考にも「父」や「子」の記載だけでは全く参考になりません。

ただ、法名と死亡年月日のみの情報で、何も知り得ない子々孫々が祀り続けていくというのも不思議です。


この中で、ひとつだけ新たな情報が分かった紙位牌がありました。

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法號 釈授與信士 不退位
寛延二巳己天 寛政一二申年亀四十九歳

唯一享年が記載されており、49歳で亡くなっていることが分かりました。

ただ、これは寛延2年に生まれて寛政12年で亡くなったのか、寛延2年に亡くなり寛政12年に50回忌をしたということなのかどちらの見方も出きるため詳細は不明ですが、確実な事は「49歳で亡くなった」ということ。
これで過去帳リストに新たに追記することが出来ました。



生前の名前や享年が分からなくとも、現在発行できる戸籍(特に明治期)で生年・名前・続柄が分かる事が出来ますが、江戸時代となると不可能です。
特に江戸時代は子供の時に亡くなる方が多く、傍系の子供の可能性もありますので、例え「子」と記載してあっても直系の子供とは限りませんので注意です。


そんなわけで、実家に仏壇がある方は隠し引き出しに思わぬ先祖に関するお宝が眠っているかもしれないので調べてみて下さい。